酢の歴史

すしと共に進化。江戸の庶民が愛した“本物の味”

始まりは「高級品」だった、江戸っ子が愛した「すし」と「粕酢」

日本にお酢が伝わったのは4〜5世紀頃。当時はお酒から偶然生まれる貴重品で、奈良時代や平安時代には貴族だけが口にできる高級品でした。お酢が庶民の手に届くようになったのは江戸時代。当時、酒造りが盛んだった尾張(愛知県)で、それまで捨てられていた「酒粕(さけかす)」を原料にした「粕酢(かすず)」が発明されます。米から作る米酢より安価で、かつ芳醇な旨味を持つ粕酢は、江戸のファストフード「握り寿司」のシャリに最適でした。

「本物」が脅かされた時代

しかし、大正〜昭和に入ると、安価で大量生産が可能な「合成酢」(化学的に作られた酢酸)が登場します。戦中・戦後の食糧難も相まって、手間暇のかかる伝統的な「醸造酢」は市場から姿を消しかけました。

「本物」への回帰

戦後、食が豊かになるにつれ、消費者は「本物の味」を求め、再び醸造酢が主流となります。私たちが今、美味しいお酢を楽しめるのは、合成酢が主流の時代でも、頑なに伝統製法を守り続けた職人たちの情熱があったからに他なりません。